アジア布通信

月1回お送りしている、アジアの布をテーマにしたメールマガジン”アジア布通信”を
再編集したページです


アジア布通信:紅花アジア布通信 第34号より

 春になると自然に明るい色が気になりますね。
ここ数年、わたしが春一番に染める色は、 「紅花」のピンクです。

同じピンク系でも「茜」のサーモンピンクが
どこか落ち着いた大人の色なのに比べて、
「紅花」のピンクは、まるで夢見る少女のよう。
思わず、「か、かわいい...」とうっとりしてしまうんです(^^)

紅花

 「紅花」はキク科の二年草で、
エジプトやメソポタミア地方が原産です。
成長すると1m近くにもなり、
先端に咲くオレンジ色の花を摘み取って、染色に利用します。

紀元前に、ピラミッドから出土した、 ミイラを包む布に、
紅花染めの麻布が使われていたということですから、
世界最古の染料の一つといえるでしょう。
シルクロードから中国、朝鮮を経て、日本に伝わったのは、
飛鳥時代頃ではないかといわれています。

 天武天皇の頃(685年)には、
それまで最も高貴な色とされていた「紫」をさしおいて、
紅花で染めた薄赤色「朱華」(はねず)が、 最高位の色とされたこともあったとか。
当時の貴族にとっても、 独占したいくらい魅惑的な色だったんでしょうね。

平安期になると、紅花染めの衣装は、 貴族社会になくてはならないものとなりました。
源氏物語にも書かれた「末摘花」は紅花の古称です

 紅花は非常に高値で取引されるようになり、 やがて、産地も全国に拡大していきます。
 中でも、最も有名なのが、 現在でも、日本一の紅花産地である、
山形県の最上川流域です。
    
紅花はガクの部分に鋭いトゲがあり、 花を摘み取るとき、手を刺します。
最上川流域では、明け方、濃い川霧がでることが多く、
露にぬれた紅花のトゲが柔らかいうちに 摘み取ることができることから、
特に紅花栽培に適しているということです。
    
ここで栽培された「最上紅花」は、
主に京都に運ばれ、京染めや京紅の材料となりました。

 紅花には、水に溶ける黄色い色素と、
水には溶けないけれどアルカリ溶液には溶ける赤い色素が含まれています。
ですから、赤に染める場合は まず、花弁を水でもみ出して、 黄色素を分離させなくてはいけません。

この液は捨てずに取っておいて、 後で、黄染めに使います。
これで染めた黄色も、タンポポのような暖かい黄色で わたしは大好きです。
一粒で二度おいしいところも、 紅花のいいところです。

黄色を抜いた花を、 今度は灰汁や炭酸カリウム液(灰汁の代用)などの
アルカリ性の液に漬けます。
すると、赤色の色素が溶け出して、 液はだんだん赤茶色になってきます。

アルカリ性のままでは、布に染まりつかないので
今度は、クエン酸や梅酢などの酸を加えて、液を弱酸性にします。
このとき、酸を加えると、シュワッと泡がたって、
みるみる透明な赤色に変わるのが、 わくわくする瞬間です。

この中に、布をつけて染めるわけですが、
普通の草木染とちがって、
紅花の赤色素は40度以上の高温では壊れてしまうので、 注意が必要です。

 口紅などの純粋な色素を取り出す場合は、
一度、紅花で濃く染めた布を 再び、灰汁に漬けます。
すると、一旦染まりついた赤色色素がまた分離します。
それを布で漉し、沈殿した「紅」を 白いお皿などに何度も塗りつけます。

京都の舞妓さんがつける「京紅」は このようにしてできあがります。
紅花は油分を豊富に含むため、 出来上がった「紅」は、
角度によって光を反射して黄金色に輝き、
その美しさは、古来、女性達の憧れの的でした。

 また、紅花は古くから漢方薬としても使われてきました。
特に血の流れを良くし、 婦人病や更年期障害にも効果があるといわれています。
昔の女性の腰巻に、 目にも鮮やかな紅染めの布が使われたのも、そのためです。

最近では、リノール酸を多く含む「ベニバナ油」が スーパーなどでも売られています。
これも、コレステロールを下げてくれる健康食品です。
そのままでも、色も香りもいいので、
薬膳料理などでも、スープや煮込みなど いろいろなメニューに使われます。
確かに、染めている最中も、いい香りが立ち込めて、
とても、気持ちよく染めれるのがうれしいです。

 産地の山形では、7月ごろが花の開花時期で、
そのころ、各地で「べにばな祭」が開かれるとか。
一度、一面の紅花畑を 見に行きたいなと思っています。

おすすめリンク

「紅花について」
:山形県のページです。紅花リンクが充実しています。