月1回お送りしている、アジアの布をテーマにしたメールマガジン”アジア布通信”を
再編集したページです
〜アジア布通信 第10号
より〜
ヘンプ(HEMP)とは、日本名の”大麻”のことです。 
大麻=ドラックという悪いイメージで
とらえられがちですが、
ここ数年、エコロジーの面から、
この植物を見直す動きが活発です。
海外のサイトでも、HEMPの接頭詞のように、
eco-friendly(環境に優しい)という単語がつくくらいです。
大麻は、中央アジア原産で、
雌雄異株のクワ科の1年草です。
その歴史は古く、繊維として使われ始めたのは、
紀元前にさかのぼります。
大麻がエコ植物として注目されている理由は、その多彩な利用価値です。
繊維はもちろんのこと、建材、紙、燃料にもなる油、
食料にもなる種に含まれるタンパク質、そして医薬品としての利用...
紙を例にとれば、パルプをとるための木が生育するためには、50〜100年かかるのに比べ、
大麻の生育期間は約100日間。
その上、土壌を選ばず、やせた土地や高地でも栽培することができます。
そして、油からは、シャンプー、石鹸など、
現在石油から作られている、ほとんどの製品を作り出すことができます。
ヨーロッパやアメリカなどでは、 こうした産業用大麻の生産が年々増加しています。
衣料品メーカーなどでも、ポリシーとしてヘンプを扱うメーカーか増えています。
それに比べて、日本でのこの取り組みは大きく遅れています。
戦前までは、日本は大麻の一大生産地でした。
私が住む北陸地方でも、かつては一面の麻畑が広がっていたといいます。
しかし、現在日本の麻産業は風前の灯火の状態です。
1948年、アメリカ占領軍によって、”大麻禁止法”が施行され、大麻の自由な栽培が禁止となりました。
それ以後、生産量は減少の一途を辿り、
現在では、栃木、長野、群馬の許可をうけた一部の地域でしか栽培されていません。
儀式の際に神前に奉納されるように、大麻は日本の文化に深く根付いている植物です。
それが、たった50年の間にここまで衰退してしまうなんて、
まったく理不尽なことだと思います。
半世紀まえまで、日本の農村では、畑で栽培した麻を夏に刈り取り、
農閑期に皮をはいで糸に積み、雪の時期に織り上げて、自家用の衣服とする、
というサイクルが ごく一般的でした。
そういう文化すべてが、麻とともに死に絶えてしまうのは、
染織に携わる者として胸が痛みます。
これほど、有益で、長い歴史をもつ植物は他にはありません。
そして、世界中でその復権が進められているなかで、
日本だけが、その波に乗り遅れているのも、 おかしなことだと思いませんか?
最近では、エスニック屋さんの店先でも、
タイやネパールのヘンプで作った、服やバッグなどをよくみかけます。
わたしも、タイのヘンプのジャッケットを愛用していますが、
夏は涼しく、冬は結構暖かで、とても重宝しています。
最初のうちは、少し生地がごわごわしましたが、洗えば洗うほど、柔らかくなじんできて、
今では、とてもいい風合いになりました。
ちょっとくたびれたら、藍で染め直すと、また新品のように着れるのもうれしいところです。
いつかまた、一面の麻畑が復活して、
日本産の麻糸が簡単に手に入るようになればいいなと思います。
岩手県の山根地区で麻の栽培と布作りを復興した記録です。
ヘンプについての資料、リンクなど。