月1回お送りしている、アジアの布をテーマにしたメールマガジン”アジア布通信”を
再編集したページです
〜アジア布通信 第7号
より〜
先だって新聞に、 「フィリピン伝統パイナップル布:ピーニャ存続の危機」
と題した記事が掲載されていました。
読まれた方もいらっしゃると思いますが、 なかなか興味深い内容でしたので、
ここで、ご紹介します。
ピーニャは、パイナップル麻とも呼ばれ、 
パイナップルの葉脈繊維を織った布です。
色は白またはアイボリーで、
向こう側が透けて見えるくらい薄く、軽く、
まるで、天の羽衣はこんな布だったのでは
と 思わせるような風合いです。
この原料となるパイナップルは、
意外にも、16世紀になってから、
スペイン人の宣教師がフィリピンに
持ち込んだものだそうです。
パイナップルというと、
南の島のイメージがありますが、
もともとは中南米原産の植物なんですって。
今、スーパーなどに並んでいるパイナップルは、 果実用に品種改良されたものですが、
原種のパイナップルは繊維をとるための種類も多いとか…
しかし、原料となるパイナップルの葉はせいぜい1m前後、
それを何度も水にさらして、繊維を取りだし、
細く裂いてから1本1本つないでいく作業は想像を絶するものがあります。
たて糸もよこ糸もピーニャ糸を使った”純ピーニャ”は、 約3千本のたて糸を使うそうですが、
その極細の糸を織り上げる苦労も並大抵のものではないでしょう。
記事の中でも、「たて糸が切れると泣きたくなる」という、
ピーニャの織り手のおばあさんのコメントが載っていましたが、
織りをやってる方だったらウンウンと頷いてしまいますよね。
1日8時間織り続けて、約25cmほどしか織れないんですって。
それだけの、手間と時間がかかる織物ですから、
当然値段も高く、純ピーニャのシャツ1枚の値段は、 庶民の平均月収より高いそうです。
ちなみに、フィリピンでは、男性は”バロンタガログ”と呼ばれる長袖シャツ、
女性は、スペイン風に袖がふくらんだロングドレスが 正装として認められていますが、
なかでも、このピーニャと、
バナナの繊維で織ったフーシという布で 仕立てたものは、最高級のランクに属するとか。
特に、正装のシャツやウエディングドレスには、
ピーニャの上にさらに精緻な刺繍がほどこされ、
ますます、ゴージャスに仕上げられます。
この刺繍は薄いピーニャの生地を補強するためでもあります。
しかし、そのあまりの手間から、 純ピーニャの織り手は減少の一途をたどっており、
かわって、たて糸に絹を使った”絹ピーニャ”の生産が急増しています。
たて糸が切れる心配がないため、織り上がりの時間が短くてすみ、
さほどの熟練がいらない”絹ピーニャ”におされ、
”純ピーニャ”は10年後には消滅してしまうのではと危惧されています。
以前、ある個展でピーニャの藍染めを見たことがあります。
そのしなやかに透けて、しかも凛とした張りのある布に、
藍の色がしっくりあって、とても素敵でした。
いつか、わたしも染めてみようと思っていましたが、
今や、それも夢に終わってしまうのでしょうか。
ちょっと、さみしいです。;;
*2000/5/18*(c)Azusa Fukushima