月1回お送りしている、アジアの布をテーマにしたメールマガジン”アジア布通信”を
再編集したページです
アジア布通信 第33号より
2003年の旅では、タイのバンコクから東北部を列車で北上し、
陸路ラオスに入国しました。
今月の布通信はラオスの首都ヴィエンチャンで訪ねた
草木染の染織工房についてのレポートです。
■ バンコク中央駅ファランポーンステーションから夜行の寝台列車に乗り、
まずは、タイとラオスの国境の町ノンカーイを目指しました。
タイの寝台列車は日本の国鉄のようで
時折エアコンが効き過ぎで寒いくらいなことを除けば、大変快適です。
バンコクを夜8時に発ち、ノンカーイに着くのは翌朝7時ごろ。
ノンカーイに着くと、駅前に沢山のトゥクトゥク(タイのオート三輪) が待ち構えていて、
すぐさま、国境に連れて行ってくれます。
ラオスのビザは国境で30ドル支払えばその場で発行してくれます。
ただ、ビザがないとわかるとインチキ旅行社に連れ込もうとするので、
トゥクトゥクの運ちゃんには「ビザは持ってる」と大嘘をつきましょう(^^)
たいしたチェックもなく、あっけないくらい簡単に手続きが終わり、
ギュウギュウ詰めのバスで、メコン川にかかる”友好橋”を渡って、 ラオスに入国しました。
ここからラオスの首都ヴィエンチャンまでは、車で約30分。
とても首都の幹線道路とは思えない、のどかな田園風景の中を走っていきます。
前日までの、バンコクの目まぐるしいような速度に比べて、
急に時間の流れが、ゆったりしたラオスモードに切り替わります。

■ どうしても、ラオスの草木の色が見たくなって、 
郊外の染織工房を訪ねることにしました。
今回訪ねたのは、タラートサオから更に北に行った
ThonSangNang Rd にある「Nikone Handicraft」です。
メコン川の河畔にある宿を出て、
キコキコ自転車を漕ぐこと約20分。
めざす場所に着いたはずなのに、
それらしき建物が見当たらず、しばらく周辺をさまよっていました。
その辺の雑貨屋のおじさんに聞いてもなぜか要領を得ません。
多分地元では違う名前で通っているからでしょう。
だんだん強烈になってくる日差しの中、
埃っぽい道を行ったりきたりして
汗だくになりながらも、
ようやく、一本違う道沿いに工房を発見!
緑の木々に囲まれた閑静な敷地の中に、
ギャラリーと工房が並び、
中庭には、染め上がったばかりの絹糸が
ずらりと干してあります。
■ まさしく、求めていた草木の色をみてホッとして、
まずは、ギャラリーの中へ。
ラオスの織物には浮き織りで模様を織り出したものや
金糸入りの華やかな織りなどいろいろな技法の布がありますが、
ここは、どちらかというと渋い絣のものが多いようです。
どこか、沖縄あたりの絣柄に似た模様もあり、 とても親近感がもてます。
沖縄の泡盛のルーツは,ラオスの地酒ラオラオだという説があるそうですが、
布にもどこかつながったものがあるのでしょうか。
すべてラオスの草木で染められた布は、 やはり、科学染料のものとは一線を画していて
風の通る静かな室内で しばし自然の色が奏でる音楽に
うっとりと耳を傾けている気分でした。

■ 裏の工房では、沢山の織り子さんたちが、
機に向かっていました。
若手の織り子さんは絣の布、
年配の織り手は、緻密な浮き織りの布を織っているようです。
模様の部分を手ですくいながら、
別糸で模様を織り出していくので、
一枚の布が織りあがるには、大変な時間がかかることでしょう。
模様はすべて裏側から織っていき、
織りかけの別糸は長く垂らしてあります。
数メートルにもなる模様を下絵もなしに織っていく技術は、
熟練なくしては真似のできないものです。
工房の中にも、庭から涼しい風が吹き抜けていて、
みんな、時折おしゃべりしながら、 のんびりと作業を進めている様子です。
織りあがった布にも、そんなゆったりした空気が表れている気がしました。
■ 機を織っている横では、大きなかまどに薪がくべられ、
糸の染色の準備が行われています。
傍らに大きな丸テーブルがあって、 草木で染められた糸と染料がずらりと並べられていました。
青のグラデーションは”Khaam”と呼ばれるインド藍、
ラオスでは、生葉とペーストを混ぜたものに、
酒と石灰を加え、5日ほど醗酵させて、藍を建てるそうです。
黄色は”Maakmee”というジャックフルーツの心材など。
オレンジ系は”Maaksaet”と呼ばれるアンナット(ベニノキ)。
茶系の色は”Sisiad”と呼ばれるビンロウジュや、
”Hokwaang”という沖縄などでもみられるモモタマナの木。
ピンクは”Fangdeang”と呼ばれる蘇芳。
赤からパープルは”Khang”と呼ばれるラック虫。
グレーから黒は”Maakeua”と呼ばれる黒檀の実。
その豊かな色彩のグラデーションに見惚れてしまいました。
工房を後にするときも、まだ美しい色彩のハーモニーに酔っているようで、
お昼近くのギラギラの太陽も気にならないまま 爽やかな気分で帰路につきました。
Azusa Fukushima(2003/3/18)