月1回お送りしている、アジアの布をテーマにしたメールマガジン”アジア布通信”を
再編集したページです
〜アジア布通信 第11号
より〜
染めや、織りの仕事って、最終的には、素材に行き着く気がします。
そして、様々な素材がある中で、 自分が住んでいる場所の素材を、
自分の手で加工して使ってみたいというのは、 誰もが思うことではないでしょうか?
わたしも、地元の素材を求めて試行錯誤しているときに、
”紙”という素材に出会いました。 そこで、ここでは”紙布”をテーマにお送りします。
わたしが住んでいる富山には、八尾和紙と、五箇山和紙という、
二つの和紙の産地があります。
そのうち、八尾には”和紙文庫”という世界中の紙工芸を集めた資料館があり、
そこで、いくつかの紙布の着物を、手にとって見せていただく機会がありました。
まず、目についたのが、裂き織りと一緒に紙が織りこんである野良着でした。
藍の古木綿の裂き糸の一段ごとに、白い紙を裁断した糸が織りこまれ、
さながら、霜降り模様のように見えて、とても面白い布でした。
そして、よくよく見ると、ところどころに黒い墨の部分がのぞき、
かつては、大福帳かなにかだった紙を、
リサイクルしたものであることがわかりました。
裂き織りの精神と共通するものを感じて、うれしくなりました。
そして、それとは別に、藍染めの薄物の着物がありました。
これは、一見、夏用の”絽”の着物のようで、 横に細いストライプが透かしてみえます。
目を凝らしてみると、藍の極細の絹糸の5本ごとくらいに、
少し太めの藍染めの紙糸が織りこまれているのです。
とてつもなく、贅沢なおしゃれ着という感じでした。
同じ”紙”という素材を使って、
ここまで、テイストの違うものができるというのが、 とても、新鮮に感じました。
紙布は、まず糸作りから始まります。
約90cm×60cmの和紙のシートをたたみ、
両端を残して、2mm〜3mmの幅に切れ目を入れていきます。
そのあと、全体を石の上などでよく揉んで、 糸の形状に丸みをつけます。
それから、残しておいた部分を交互にちぎって、 1本の糸にしていきます。
最後に、糸車で縒りをかけて、出来上がりです。
縒りをかけると、端の重なった部分が節になり、 ちょうど、紬糸のようになります。
紙の種類によって、糸の仕上がりがかなり違ってきます。
厚手の紙だと、縒りをかけるとき切れやすいので、
なるべく、薄く、しかも強度を持った紙でなくては、 うまくいきません。
わたしが試した中では、”もみ”呼ばれる、
製造途中で手で揉んで皺をつけた紙が、
とても扱いやすくて、いい感じの糸ができました。
また、漆を漉すのに使う紙でも、いい紙糸ができるということです。
紙布のよさというのは、一度さわってみると、とてもよくわかります。
さらっとして、それでいて暖かく、
木綿と麻のいいところを足して2で割ったような風合いなのです。
気になるのは、洗濯して大丈夫なのか?ということですが、
縒りをかけて、織ったり編んだりした糸はとても丈夫で、
通常の洗濯でもまったく問題ありません。
また、かつては、野良着や道中着に用いられたように、
保温性や、通気性にもすぐれています。
紙自体の素材は、一般的な楮、三椏から、麻、竹など様々で、
それによっても、いろいろ変化が楽しめそうです。
アジア各地にも、ネパールのロクタ紙や、タイの手漉き紙、
インドの布からできた紙など、個性的な紙がたくさんあります。
そんな紙も、織りの素材の一つと考えれば、
ずいぶん、糸のレパートリーが増えると思いませんか?
実際、アジアの紙の産地で、
日本の紙布を普及させるプロジェクトも 進行しているようです。
そんな、アジア産の紙布も一度見てみたいものです。
江戸時代から紙布の名産地として栄えた、
宮城県白石の和紙のページ。
紙布の製造工程が見れます。
*2000/10/13*(c)Azusa Fukushima